寄稿

富内叙子:メディカル専門のマーケティングリサーチ

 

 

ここでは、一般消費財や耐久財などを扱う一般的なマーケティングリサーチとは別に、医療従事者や患者さんを対象としたメディカル専門のマーケティングリサーチの概要についてご紹介します。

 

1) 主な調査対象領域は医療用医薬品

一言で「薬」といっても、薬局やドラッグストアなどで販売される「一般用医薬品」と医師・歯科医師の診断をもとに処方される「医療用医薬品」の2つに分類されます。メディカルを専門としたリサーチャーが担うのは後者の「医療用医薬品」を対象とした調査になります。*医療機器も対象に含まれますが、ここでは「医療用医薬品」のアドホックリサーチにポイントを絞ります。

*医療機器(出典:一般社団法人日本医療機器産業連合会)
「人若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること、又は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等(再生医療等製品を除く。)であって、政令で定めるものをいう。」(薬機法第2条第4項)

 

2) 医療用医薬品市場

医療用医薬品の市場規模は、*2016年のデータで約10兆円と、**2019年のコンビニエンスストア(既存店ベース)の年間売上高と同程度の規模であることから、マーケティングリサーチの実施数も少なくないことが容易にイメージできると思います。ちなみに、医療用医薬品に限らないデータにはなりますが、日本マーケティングリサーチ協会が実施する「第45回経営業務実態調査」によると取引先業種はPharmaceutical/化学・医薬品製造業(16%)とConsumerNon-Durables/食品・飲料・嗜好品製造業(15%)が首位の座を分け合っています。

*出所:日本製薬工業協会 DATABOOK2019 出典:厚生労働省「医薬品・医療機器産業実態調査」
**出典:一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会コンビニエンスストア統計調査月報 CVS統計年間動向(2019年 1 月~12月)

 

3) メディカル専門のマーケティングリサーチ会社の主なクライアント

メディカル専門のマーケティングリサーチを依頼するクライアントは主に製薬企業で、一般生活者にはあまり馴染みがない企業が多いことが特徴です。「2020年度版 製薬会社 売上高世界トップ10」にランクインする企業はもとより、内資系、外資系を問わず多くの企業がクライアントとなっています。

 

4) メディカル専門のマーケティングリサーチにおける対象者とその目的

医療用医薬品を処方するのは医師であることから、医師を対象としたインタビュー調査、インターネット調査が多く、主な調査目的は図1になります。一方、患者さんを対象とした調査は主に「Patient Journeyの作成」を目的とし、患者さんが困っていること、必要としていることを読み取っていくケースが主流です。これについては、患者定性調査(Patient Journey作成編)をご参照ください。

 

5) メディカル専門のマーケティングリサーチャーに必要な要件

メディカル専門のマーケティングリサーチャーは、リサーチリテラシーが高いことはもちろん、医療知識があることが必須条件となります。疾患の診断方法、治療選択時の重視点、疾患で保険適応を取得している薬、適応を取得している治療ライン、投与方法、該当する領域で上市が予定されている新製品などの知識がないと、調査票を作成できないからです。分析する際にもそれらの知識が必須であることは言うまでもありません。対象者が医師の場合でも患者さんの場合でも同様です。特にがんの治療においては、遺伝子変異など、がんの特徴に合わせた治療も実施されていることから、持つべき知識は高度化し、かつ日進月歩の様相を呈しています。当社インテージヘルスケアでは、がん領域についてのバックグラウンドをもち、国内外の学会に参加する専門性の高いリサーチャーがクライントの課題に応えています。

補足になりますが、日本製薬工業協会は製薬企業に対し「医療用医薬品プロモーションコード」を制定しており、これは調査票の設計や提示物の作成にも関わってきます。メディカル専門のリサーチャーは、こういった倫理綱領も頭に入れて、プロジェクトを推進する必要があるでしょう。

 

インテージヘルスケアのご紹介 (https://www.intage-healthcare.co.jp/)

<理念>
HEALTHIER DECISIONS - 健やかな未来へ導く -
我々は情報に命を与え、医療を享受する人、医療を提供する人、健康を願うすべての人々が納得の選択をするための力となります。

<主なサービス>
・医療用医薬品, 医療機器のアドホック調査

・マルチクライアント調査

・一般用医薬品のアドホック書調査 / SDI(全国一般用医薬品パネル調査)

・医薬経済、・アウトカムリサーチ (HEOR) 他

 

<お問合わせ先>
e-mail: ihc-info@intage.com TEL: 03-5294-8393(代表)

 

By 富内叙子〈(株)インテージヘルスケア リサーチディレクター〉

 

 

 

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